漢方治療

漢方治療は乳製品や肉類を多く食べるために内臓疾患が多い中国西方で発展しました。

はじめは薬草の力で治そうとしたのが始まりの様です。

 

日本へは5世紀ころに伝来し、日本独自の理論と融合し、和漢方として発展してきました。

「和(日本)」の治療法に対し、「漢(中国の昔の国名)」の療法と言う意味があります。

現代では漢方薬の有効成分だけを取り出した漢方エキス製剤が出来、手軽に漢方薬が利用されるようになりました。

 

漢方薬の効くしくみ

自然界の植物や動物、鉱石、化石などの素材で作られた「生薬」を数種類組み合わせて「漢方処方」し服用することで、身体の自然治癒力を高めて行くことにより、治療・予防するものです。

 

有効成分が内臓(六腑)で消化吸収され、五臓に働くことで効果を発揮します。

五臓から経絡を通じて全身に薬効が運ばれることで全身のバランスを調整する働きもあります。

 

本来は煎じ薬ですが、丸薬、散薬(粉薬)膏薬などもあります。

 

生薬とは

植物(全草、根、茎、葉、果実、種子、樹皮)動物(全体、臓器、角、殻、皮、分泌物)鉱物、貝殻などから作られます。同じものでも部位により効能が違うとされています。

 

植物の形が人間の体の部位に似ているものは、その部位に働く薬効があるのではないか(象形薬理説、特徴表示説)と考えたのが始まりと言われています。これは天神合一の考え方に基づくものです。

 

古代中国の時代から実際に食し、効能を確認すると言う経験の積み重ねにより見出されてきたものです。

作用と副作用の両方があり、2000年の歴史で集積されたデータ(経験値)で把握されています

 

生薬の特性

生薬の特徴を五行に当てはめ、薬性(五性)、薬味(五味)として特徴を分類し、それらが五臓と経絡のどこに作用するかをあらわすのが帰経です。これらを漢方処方の組み合わせに利用します。

 

五性=体を温めるか冷やすかで寒性、涼性、平性、温性、熱性に分かれる

五味=酸or渋(すっぱいor渋い)、苦(苦い)、甘or淡(甘いor薄い)、辛(辛い)、カン(塩辛い)

五味と帰経の関係については五行の色体表をご参照ください。

 

漢方薬とは

生薬の作用と副作用を理解したうえで配合し、生薬の効果の偏りを調整し、副作用を抑え、薬効を最大限にはたかせるようにしたもの

性質によって上品、中品、下品に分類され、それらをバランスよく組み合わせます。

 

上品=作用が穏やかで、長期服用でも副作用がない。他の生薬の副作用を軽減し、全身の調子を整える

中品=上品より効果は高く穏やかだが、副作用があり短期服用するもの。新陳代謝を高める。

下品=作用が強く、即効性があるが、副作用が強く服用量や期間に注意が必要なもの

 

日本と中国の処方の違い

「漢方」は日本の言葉で、日本で発展した治療法の呼び方です。

中国の伝統医学で使われる薬は「中薬」と言います。

日本では組み合わせや量などが厳密に決められていますが、中薬では体質などにあわせ微調整します。

現代ではこれらの流れをくむ様々な流派があるようです。

 

漢方薬の処方

日本の法律では漢方薬を処方できるのは医師か薬剤師だけとされています。

医師や薬剤師は基本的に西洋医学の考え方をベースに学んでいるので、東洋医学の専門家とは限りません。

現在の法律では東洋医学の専門家でなくとも、医師の資格を持っていれば漢方薬を処方し、鍼灸治療なども行えるとしています。

当然のことながら、しっかり東洋医学を学んだ医師とそうではない医師の力量は違いますので注意が必要です。

 

漢方薬の副作用

漢方薬は効果が薄く、副作用もないと誤解している人が多いようですが、逆です。

 

効果があるからこそ、長い歴史の中で利用されてきたのであり、服用法を間違えば効果がないばかりではなく、悪化させることもあり、副作用も把握されています。

歴史の浅い現代医学薬と違い、2000年以上のデータの蓄積があり、組み合わせにより副作用を軽減されるように作られています。

  

ですが、「証」に合わない漢方薬や間違った服用、西洋医学薬や健康食品との併用、アレルギー反応などで副作用が出ることもあります。

どんな漢方薬にも上記のように下品と呼ばれる副作用の強い生薬が入っていますので、「長期間飲んでも絶対大丈夫」とは言えないことを頭に入れておきましょう。

 

漢方薬に限らず、近年は「西洋医学はダメ、伝統療法なら安全」「自然のものだから安全」などの間違った情報が伝わっていますが、その考え方こそ危険です。

作用のあるものは、必ずその薬効の理由があり、その効果をあらわす物質が含まれています。

「完全に安全」と言うのは存在しないと思った方が良いでしょう。

全てにおいて、それがどういうものかある程度把握し、安全に利用できるように自ら気を付けることが必要です。

 

副作用とめん眩(好転反応)

「証」に合わない漢方薬の服用で症状が悪化し、別な症状を引き起こす恐れもあります。

近年は薬局でも自分で選んで漢方薬を購入できますが、出来れば専門家のアドバイスを受けることをすすめます。

 

また、西洋医学薬の医師は「風邪なら○○」「生理不順なら○○」と西洋医学薬を選ぶ感覚で選ぶことが多いようですが、はっきり言えば間違っています。

例えば風邪の時に処方されることの多い「葛根湯」は証の合わない人が服用すると体力を消耗し、悪化することもあります。

 

めん眩とは自然治癒力が正常になり、抵抗力が活発化したため、体の中で病気と抵抗力が戦っている状態のことです。一時的に悪化したように見えます。

病気や症状は身体の中に不要なものがあり、それを身体の外に出すために起こるものだからです。

 

副作用との違いを見分けるのが難しいので、2~3日以上症状が続く場合は医師など専門家の判断を仰ぎましょう。