森の奥

それは、森の奥深く。
日の光もささないようなところに、
それらの木は生えている。
日もあたらないと言うのに、
どんどんと葉を茂らせ、実を落とし、静かに増えていく。

時折、私はその森の奥深くに入り込んでしまう。
それらの木は私にささやく。
「私は生きている資格がない」
「自分はだめな人間だ」
「失敗ばかり」
「すべて私が悪い」

もうずいぶん前に、
私はそのあたりで何年間も過ごしていたことがある。
そこから立ち去ることよりも、
その毎日を終わらせることばかり考えていた。
私につながれた二人の子どもの小さな手が、私の命をつなぎ、
そこから立ち去る勇気を与えてくれた。
そこから抜け出し、浴びた光は暖かく、
「こんな私でも生きていていいのだ」と感じさせてくれた。

それは自分に対する厳しさでだけではなく、
他者に対する厳しさ。
もっと言えば、自分を含めた総ての者に対する愛情の欠如。

私の未熟な魂は、
一番大切な「愛」を学ぶレッスンをたくさん用意し、
落第生の私はその度に傷つき、
森の奥へと逃げ込んでしまう。

そう、私は逃げ込んでいたのだ。

この森は私が作ったものなのだから。
だから、それらの木は、切り倒したように思っても、確実にそこにあるのだ。

湿ってひんやりとしたそこは寒く、心細い。
けれど、どこか心地よく、
座り込んだ私はそこから立ち上がらない理由を並べる。

「私だけが悪いのではない」
「忙しかったから」
「具合が悪かったから」
「あの人が悪いのだ」

今、森歩きを始めた私は、その奥深くをも見つめる。
何故その木が生え、私はそこへ入り込むのか。
何故、そこから抜け出せないのか。
自分はどこへ向かいたいのか?

それは、とてもつらい作業。
木は太く、切り倒すのには大変な労力を要する。

光の当たらないそこに、私は光を当てられるだろうか?
今度は自らの力で、そこから抜け出す勇気を持てるだろうか?
そしていつか、愛情と言う光をもって、そこを照らせるだろうか?

 

 

ブログに添えた文章

暗闇に続く文章です。
暗闇から生還したあとも、
それは時折私を包みます。
なぜなら、それは私の中にあるからです。


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